ライフアップVOL.76

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ライフアップVOL.76

ドクターに聞くがんのがんのがんの放射線治療高邦会放射線治療センターセンター長早渕尚文国際医療福祉大学教授久留米大学名誉教授、医学博士テーマ日本人の2人に1人は、がんを患う時代となり、がん治療への関心が大きく高まっています。そのような中、身体への負担が少なく治療の効果も大きい、と注目されているのが「放射線治療」。その現状について、高邦会放射線治療センターの早渕尚文センター長に伺いました。??????????高齢化に伴ってがんを患う人が年々増加していますね。2010年の統計となりますが、国内では、69万人ががんとなり、35万人が亡くなっています。今や、国民の2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで亡くなっているというのが現状です。また、がん全体でみますと、5年生存率は、約50%という数値もあります。もし、自分自身、あるいは家族ががんになったら…と考え、多くの人ががんの「治療」に興味を持っています。そうですね。がんの治療は、早期発見、早期治療が原則となり、手術、抗がん剤そして放射線などが挙げられます。手術となった場合、胃がんは胃を、肺がんは肺を、乳がんは乳房を、と身体の一部を切除しますので身体には大きな負担となります。しかし、最近では、術後の生活の質(QOL)を考えて、例えば乳がんの場合、最小限の手術を行い乳房を温存し、これに加えて放射線治療を行うなど従来とは治療も変化しています。放射線治療を受ける患者さんは増加しているようですが放。射線治療は、放射線を当てることでがんの細胞分裂を止め、最終的にはがんをなくすというものです。具体的には、1回あたり2、3分の照射、合計30?35回の照射を行いますので、トータルで、6~7週間の通院が目安です。放射線治療は、放射線を利用した検査機器が進化すると同時に、急速に進歩しています。従来は、正常組織への障害が強いため、腫瘍を制御できる十分な放射線を照射できませんでしたが、現在、シミュレータと呼ばれる装置がCTを用いて3次元になるなど、各種の機器が進化することで、放射線治療を行う部位や方法をより正確に判断、がん細胞や腫瘍をピンポイントで照射することが可能となっています。治療を受ける患者さんも増加、1995年には約7万人でしたが、この15年で3倍近くの20万人となりました。放射線治療の効果はいかがですか?例えば、前立腺がんは、手術によって排尿障害などの機能障害が起こる場合もありますが、放射線の強さを変化させて照射する強度変調放射線治療(IMRT)では、機能障害はほとんど起こりません。食道がんは、抗がん剤併用で、手術をする場合と同等以上の治療成績を挙げられる可能性もあります。肺がんや頭頸部がんでも、機能や形態を保ちながら手術に劣らない実積が期待できますし。かし、胃や大腸など、常に動いている臓器は、腫瘍の位置の固定が難しくあまり適していません。また、放射線治療は、治せない段階のがんの治療、いわゆる緩和医療にも利用されています。骨転移による痛みや出血、脳転移による麻痺などを抑えることもできます。放射線治療を選択する人も増えそうですね。国内のある大学で、手術可能ながんを、患者さんの希望で、手術か放射線治療のいずれかを選択して治療した試験なども行われましたが放射線治療を選択する人が多いという結果でした。しかし、放射線治療ができる施設は全国でも約700施設、放射線治療の専門医師も全国でも1000人未満とまだまだ少ないのが現状です。また、放射線治療は放射線治療の専門医が治療計画を立て高度な医療機器を用いています。加えて、専門医だけでなく放射線治療専門技師、放射線治療品質管理士、がん放射線療法看護認定看護師など、専門の医療職がそろうことで初めて質の高い治療が可能ですので、そのような体制の施設は、今後ますます需要が高まると思われます。当グループ病院の放射線治療の現状は?福岡山王病院では、放射線治療装置「リニアック」の4月稼働を目標に準備を進めています。腫瘍に放射線を集中し、周囲の正常組織への照射を減らすことができるIMRTを行う予定です。副作用も軽減しつつ、かつより強い放射線を照射することで、がん根治を目指します。また、福岡山王病院のリニアック室には、自然を思わせる壁紙などを配し、BGMを流し、少しでも安心して、治療を受けられる環境を作ります。平成19年から放射線治療を行っている高木病院でも、同型のリニアックを導入し、IMRT稼働に向けて準備を進めています。4月から稼働する福岡山王病院の放射線治療装置LIFE UP|17